2021/01/15
寒い日なのに手足の先だけ熱くほてってしまったり、下半身は冷えているのに、顔から上はのぼせていたり…。頭部が熱くなり、手先・足先の末端との温度差が大きい状態を『冷えのぼせ』と言います。「年齢や体質的なものだから仕方ない」と諦めている人も多いのではないでしょうか。
実は『冷えのぼせ』は冷え症の一種で、冷え症が起こる要因を取り除くと症状が軽減したり予防したりすることができます。また女性では閉経前後、すなわち更年期に出現することが多い症状ですが、最近は若年化していて20~30代でも増えています。
今回は、『冷えのぼせ』が起こるメカニズムや、予防・対処法についてご紹介します。あなた自身が「気持ちが良い」と思えるケアを、無理のない範囲で実践してみてください。
先程もお伝えしたとおり、『冷えのぼせ』は冷え症の一種です。
からだの冷えは、血の巡りが悪く、熱が均一に配られないことによって起こります。
冷え症には全身が冷える「全身型」、手足が冷える「四肢末端型」、上半身は熱く下半身が冷える「上熱下寒型」、ストレスで冷える「体感異常型」があります。『冷えのぼせ』は、このうち「上熱下寒型」にあたります。その名の通り、手や足など末端は冷えているのに、上半身や顔がカッカと熱くなるのが『冷えのぼせ』です。
のぼせとは「突然からだがとても熱くなる」「熱っぽく、頭がぼーっとする」と言う症状です。
お風呂上がりやサウナに入った時の状態を思い出してください。血が全身にめぐり、一気にかーっと熱くなります。『冷えのぼせ』の場合は、あの状態が首から上だけに起こり、その一方で下半身など末端は凍えるように冷えている状態です。
“冷え”と”のぼせ”は正反対の症状であるため「矛盾しているのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、”のぼせ”と”冷え”とが同時に起こることは決して珍しいことではありません。
「のぼせ、発汗、冷え」は、基本的に3つで1セットです。
からだが冷えると血の巡りが滞って熱がまんべんなく配られず、特に血が巡りにくい下半身は冷えてしまいます。そして反対に、血が溜まりがちな部分はのぼせやほてりが起こります。顔が真っ赤にほてると尋常ではない熱さを首から上に感じますが、のぼせとほてりが急激に起こることを“ホットフラッシュ”とも言います。
のぼせに続いて、発汗が起こります。
『冷えのぼせ』の発汗で特徴的なのは、全身に汗をかくのではなく、首から上にかくという点です。頭皮から汗が吹き出して、顔をつたってぼたぼたと垂れてくるような発汗です。
大量に汗をかいた後に襲ってくるのは、寒気です。
汗が蒸発すると熱が奪われて体温が下がるのは当然のことで、そのため上半身、特に首から上は汗をかくほど熱いのに、下半身は冷たく冷えているという『冷えのぼせ』の状態が起こります。
冷えのぼせには女性ホルモンのエストロゲンが関係しています。
そのため、『冷えのぼせ』が起こりやすいのは、女性ホルモンの問題を抱えている人たち。エストロゲンの分泌が低下する閉経前後に出現することが多く、更年期障害の代表的症状の1つに数えられます。
エストロゲンの分泌低下は、自律神経の乱れにつながります。
自律神経は血管をコントロールして体温の調節をする働きをしていますが、それが乱れることで「血管を拡張する」「汗をかく」という作用を引き起こします。
また、冷えの引き金は血の巡りの悪さですが、もともと女性は筋肉量が少ないことで血行が悪く手足が冷えやすくなり、更年期はさらに拍車がかかります。これもエストロゲンの分泌低下による、自律神経の失調が原因です。末端の血管が収縮して血流が悪くなり、触ると氷のような冷たさを感じるほど冷え切ってしまうことも。「上半身は亜熱帯気候、下半身はツンドラ気候」とはよく言ったもので、更年期特有のバランスの悪さを表しています。
『冷えのぼせ』では、首から上に汗をかくことが多くあります。
もちろん全身に汗をかく人、手のひらや脇の下に汗をかく人もいますが、特に頭皮や顔から大量に汗が出る傾向にあります。その理由は、『冷えのぼせ』が引き起こす発汗が、「自律神経の失調」によるものだからです。
運動や高温によってかく汗とは違い、緊張したり、不安になったりしたときに出る「精神性発汗」の要素が強く出ます。つまり、交感神経が異常に高まった状態です。首から上に汗をかくのは心臓に近い部分の血管が拡張しやすいからだとも言われています。
「汗をかくくらいは我慢すれば良いのに」と思う人がいるかもしれませんが、『冷えのぼせ』の発汗は周囲から見ても「異様な」量です。顔から滝のように汗が流れ出し、ひどい場合はタオルで拭いてもすぐにびっしょりになってしまいます。しかもこの発汗が突然起こるのです。
対処法としては、汗を即座に止めることはできないため、冷たいペットボトルなどを首の後ろに当て、首から上の血管を冷やし収縮を促すことで多少抑えることが可能です。小さな保冷剤を常備したり、大きめのタオルハンカチを持ち歩いたりするなど備えをしておくと安心です。また、大量の発汗には化粧崩れももれなくついてきますので、汗に強いウォータープルーフタイプの化粧品を選ぶとよいでしょう。
『冷えのぼせ』は更年期障害の代表的症状の1つと言われていますが、最近は若年化しており、20~30代でも見られます。
20〜30代で『冷えのぼせ』の症状に悩む人は、月経不順であることが多いようです。それは更年期と同じ理由、つまり女性ホルモンが乱れていることを意味します。
女性ホルモンに起因する症状は年齢を重ねるごとに悪化する傾向にありますが、20〜30代は生まれたときからエアコンを使う環境下で生活しており、また、慢性的な運動不足、体を冷やしやすい食生活やファッションなどの生活習慣の偏りも背景にあります。そのため、本来40代以降に見られる傾向が若年化していると言われています。
さらに自律神経は<悩みごとや緊張などの精神的ストレスの影響も受けやすく、ストレスが引き金となって症状を悪化させることも考えられます。30代以下で『冷えのぼせ』を疑う症状があれば、卵巣機能の低下に加え、心身に大きなストレスがかかっているのかもしれません。
『冷えのぼせ』の症状緩和のためのセルフケアを紹介します。無理のない範囲で、あなた自身が「気持ちが良い」と思えるケアを実践してください。
『冷えのぼせ』の症状緩和には、リラックスして深呼吸することが有効です。
顔や頭がほてったりのぼせたりすると、突然たくさんの汗が出てきます。自分の意思では止められないため焦ってしまいがちですが、汗も自律神経がコントロールしているので、焦ることで一層ひどくなります。
ひとまず落ち着いて、大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出しましょう。
自律神経のバランスを整えるためには、リラックスできる環境づくりを心がけることも大切です。例えば、お気に入りの香りのアロマを焚く、肌触りのいい寝具や部屋着を使用する、部屋を間接照明で優しく照らす、などあなた自身が「気持ちが良い」と思えるケアを取り入れてみてください。そして、深夜までテレビやパソコン、スマホを見るなど神経の興奮状態が続いてしまう行動は控えるようにしましょう。
『冷えのぼせ』の症状緩和には、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かることも有効です。
入浴には心とからだをリラックスさせる作用があります。
温めて楽になる人もいれば、むやみに温めると、のぼせや気分が悪くなるなど、逆効果となる人もいます。湯温は人それぞれ好みがありますが、適正温度は38~40℃で、肌に触れたときにほっとする温度がベストです。ぬるいと感じる場合は、追い炊きなどで徐々に42℃くらいまでは上げてもOK。最初から熱すぎるお湯は刺激になるので避けましょう。
『冷えのぼせ』の症状緩和には、ハーブティーで気持ちを落ち着けることも有効です。
ハーブティーのおすすめは、セージをブレンドしたもの。セージには女性ホルモンを活発にさせる働きがあり、のぼせや多汗を抑える効果が期待できます。
『冷えのぼせ』の症状緩和には、温度調節や汗対策を考慮した衣服を選ぶことも有効です。
体温調節がうまくいかず、周囲の人と体感温度に差が出てしまうのが更年期の特徴です。カーディガンやストール、スカーフなどを利用して、暑かったり寒かったりという変化に対応できるようにしましょう。また、汗をかいたあとには冷えてしまうことが多いため、肌着は汗をよく吸い取るものを身につけてください。
のぼせた時には、顔や頭を冷やすとスッキリしますが、冷やしすぎないよう注意することも必要です。発汗には制汗剤や汗拭きシート、のぼせやほてりには団扇や扇子、下半身の冷えには絹や綿の靴下の重ね履きなど、環境と自身の体調に合わせた工夫をしましょう。
『冷えのぼせ』の症状緩和には、食事内容に気を配ることも有効です。
ビタミンB群やビタミンC、Eなどをたっぷり摂るように心がけましょう。
冬が旬の野菜は身体を温める性質があり、特に、ねぎ、生姜、ニンニク、かぼちゃ、かぶなどがおすすめです。反対に、ほてりや多汗を招きやすい、カフェインやアルコール、香辛料などの刺激物はできるだけ控えるようにしましょう。
からだが冷えて血流が悪くなることで、栄養や老廃物の運搬が滞り気味になります。この状態が続くと新陳代謝が下がり、体温を維持したり、食事を消化して吸収したりする機能もうまく働かなくなってしまいます。
ほかにもイライラ、頭痛、顔のほてり、肩こり、肌荒れ、運動によるダイエットの効果が出にくくなるなどの悪影響もあります。また、あらゆる生命活動に関わる酵素の働きが悪くなり、免疫力がダウンし病気にかかりやすい・治りにくいからだになってしまうことも。
『冷えのぼせ』は頭部が熱くなり、手先・足先の末端との温度差が大きい状態を指しますが、顔のほてりに気を取られ、冷えていることには注意が向きにくいため”早めの気づき”が重要です。
ほてりやのぼせがひどいときは婦人科を始め、内科、診療内科へ。または、漢方外来、女性外来や婦人科に相談してみてください。
更年期や生理不順など、女性ホルモンのエストロゲンが不足している場合は、エストロゲン剤を使って補うのも一手です。『冷えのぼせ』の症状を抑制し、その後に現れる、ほかの更年期の不調を軽減することにもつながります。更年期でなくても低用量ピルを使ってホルモンバランスを安定させると自律神経が安定し、のぼせや発汗を減らすことができるでしょう。
『冷えのぼせ』の症状を気にするあまり、生活や行動が制限されることは良くありません。
生活に差し支えるほど症状が重いときは、カウンセリングだけでも効果があります。
心と体はつながっているので、体が冷えてコチコチになると心まで冷えて元気がなくなってしまいかねません。交感神経の緊張が症状を増幅させるため、ほてりや多汗などを気にして焦ることでますます症状が強く出ます。その場合は、気持ちをリラックスさせるカウンセリングや自律訓練法を受けて、症状を改善させるように努めましょう。
『冷えのぼせ』は冷え症の一種で、そのため冷え症が起こる要因を取り除くと症状の軽減・予防ができることがあります。体の冷えをとることは健康できれいにいるための最初のスタートです。
無理をしたり我慢したりすることは逆効果。のんびりとあなた自身が「気持ちが良い」と思えるケアを実践してください。まずは生活習慣を見直しから行い、少しずつ体を温める生活に変えていきましょう。
[ライター:古山まり]
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